陽気なピエロのコインロッカー

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奥野修司『心にナイフをしのばせて』文藝春秋<78>

心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて

久しぶりのノンフィクション。
28年前、同級生をメッタ刺しした高1の殺人犯が弁護士として社会復帰していたというスクープばかりが宣伝されているようだが、本書の8割は遺族の地獄が描かれている。まさに地獄だ。
社会的にみればこの殺人犯は少年法の鑑のような存在で見事に更生している成功例といえる。しかしこの遺族とのギャップはなんだろう。一度も謝罪の言葉もなく立派に更生したと本当に言えるのだろうか。著者が元殺人犯に接触したときの対応は想像をはるかに超越していてやり場のない怒りを覚える。