陽気なピエロのコインロッカー

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奥田英朗『オリンピックの身代金』角川書店<18>

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

奥田英朗の巧さについてはもう今さら加えることはないし、どうしても水準以上の作品を期待してしまうのだけれど常にその期待を上回る稀有な作家だ。この作品についても「著者の新境地にして最高傑作」という看板に偽りなし。
時は1964年。東京オリンピック開催目前。国民の誰もが成功を願う日本で初のオリンピック開催。世界に誇れる近代都市が造られていくなか、島崎はあることがきっかけで、近代都市の影の部分を感じるようになり、以前では思いもよらなかった行動をとることになっていく。巧さに加えてさらに物語に深みが滲みでている。読了後、島崎の存在が深く胸に刻まれる。