陽気なピエロのコインロッカー

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佐藤賢一『二人のガスコン(下)』講談社文庫<13>

二人のガスコン〈下〉 (講談社文庫)

二人のガスコン〈下〉 (講談社文庫)

『二人のガスコン』堂々、完結。
西洋歴史小説の第一人者である佐藤賢一の、まさに面目躍如。はっきり言って僕は西洋の歴史に関してはまったくの無知である。でも、楽しめる。
読了後には思わず、この辺の歴史を少しだけ調べてしまったほどだ。
調べてみてわかったのだけど、なるほどこれは、史実ではない。いや、史実である可能性はほとんどないというべきか。そもそもこの作品『二人のガスコン』であるダルタニャンとシラノは、なるほど同時代を生きた人物であれこそすれ、お互いの存在を知るのみの関係であったらしい。
それを佐藤賢一は、まさに「あったかもしれない歴史」を紡ぎだすのだ。もちろん、なぜこの活劇の後、ダルタニャンとシラノが自分たちの関係をおおっぴらにしないのか、ということまで活写している。
ルイ14世の出生の謎、鉄仮面の謎・・・。歴史研究家の間でも謎とされている問題を見事エンターテイメント小説に昇華させた作品といえるだろう。少々荒唐無稽すぎるかもしれないけれど。
ともかく、やっぱり佐藤賢一は凄い。小説としての旨味も十分だ。ただ、ちょっと冗長な面があるのも否めない。他の作品に比べるとちょっととっつきにくい感じがあるかもしれない。