陽気なピエロのコインロッカー

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佐藤賢一『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』講談社文庫<65>

ジャンヌ・ダルクまたはロメ (講談社文庫)

ジャンヌ・ダルクまたはロメ (講談社文庫)

おそらく佐藤賢一初の短編集。
最近は西洋歴史小説という枠からどんどんはみ出して新作を出して驚かせている佐藤賢一。早く文庫になってもらいたいものだ。
この短編集は中篇から短編まで7編を収めているけれど、わりとおとなしめな作品が揃った印象。もともと大長編が得意なだけにその筆力が発揮される前に物語が終わってしまう感じがしないでもなかった。
その中で「エッセ・エス」という中篇はプチ『王妃の離婚』のような体裁で一番楽しめた佳作。「ヴェロッキオ親方」や「フォラーレ」では最後の一文でにやりとさせられる趣向(解説者は「切り札の切り方」と表現していたが)がとられ、なかなか面白い。