陽気なピエロのコインロッカー

読んだ本を晒す棚 感想はTwitter:はらかず@kazu7honyomiで

『偶然のラビリンス』デイヴィッド・アンブローズ、鎌田三平訳(ヴィレッジブックス)

偶然のラビリンス (ヴィレッジブックス)

偶然のラビリンス (ヴィレッジブックス)

久々の翻訳もの。これが面白かった!・・・んだよなあ途中まで(笑)。
テーマは「偶然」。このテーマもとても興味深かったし、なにより翻訳ものなのにリーダビリティが抜群。様々な偶然に吸い寄せられていく。小説、特にミステリでは偶然に頼りすぎてはリアリティを失ってしまうという欠点がある。けれどこの作者は「実際にあった偶然」を作中に忍ばせることにより、さらに物語を興味深いものにしていくという技に成功しているようにみえる。僕は知らなかったのだが「実際にあった偶然」として作品中で紹介されていたのをちょっと長いが引用してみる。

リンカーンは1847年に、ケネディは1947年に、それぞれ国会議員に選出されている。(中略)どちらも大統領在任中に男児を亡くしている。二人とも頭部を後から撃たれたがそれは金曜日に妻のとなりにすわっている時のことだった。しかも二人ともその後任はジョンソンという名の南部出身者で、この二人のジョンソンの生年は百年ちがいである。(中略)リンカーンにはケネディという秘書がいて、ケネディにはリンカーンという秘書がいた。リンカーンが殺されたのはフォード劇場で、ケネディが殺されたのはフォード社のリンカーンという車に乗っている時だった。

なんという偶然だろう。って小説と関係ないところで驚くのもどうかと思うがこのような逸話も多く収められていた。
で、後半なんだけど、これが文字通り二転三転。詳しくは書けないが「えっ!?」「えーーっ!?」の連続だった。まあ僕にとっては「普通」であって欲しかったんだけど・・・(ってこれがネタバレになってないよな)。