陽気なピエロのコインロッカー

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2018年12月に読んだ本

<45>森見登美彦『熱帯』文藝春秋 ★3.5
久々のモリミー本。独特の世界観は相変わらずだが、物語の風呂敷がどんどん広がってそれが入れ子構造のようになって・・・。面白いのは面白いんだけど、SF気の乏しいワタクシには少々ついていけない部分があったのも確か。骨太物語であるのは確かなんだけど。

熱帯

熱帯



<44>今村翔吾『童の神』角川春樹事務所 ★4.5
2018年、最も飛躍した作家のひとりであろう今村翔吾の初の単行本は平安期の伝奇小説。これがまた圧倒的な熱さ、面白さ。シリーズものも積読がどんどん溜まってしまっているので早く消化しなければ。

童の神

童の神



<43>門井慶喜『家康、江戸を建てる』祥伝社文庫 ★4.5
単行本で読み逃していた門井慶喜出世作ともいえる作品。当時から面白そうな匂いがぷんぷんしてたけど、予想通りの面白さ。特に冒頭の「流れを変える」はすごい。

家康、江戸を建てる (祥伝社文庫)

家康、江戸を建てる (祥伝社文庫)



<42>泡坂妻夫『夜光亭の一夜 宝引き辰捕者帳ミステリ傑作選』創元推理文庫 ★4
末國善己編の13の短編集。技巧に満ちた、そして時に切ない宝引きの辰の文字通り傑作選。ここ数年の創元推理文庫はまさにワタクシ好みの傑作選を次々に編んでくれていい仕事してます。

2018年11月に読んだ本

<41>竹宮ゆゆこ『あなたはここで、息ができるの?』新潮社 ★4.5
正直、読み始めてしばらくは苦手な部類の小説だなーと思ってた。それでもぐいぐい引き込まれるようななんともいえない魅力があるなと思いながら読んでいた。読了して、思わず「すごい本を読んでしまった」と呟いてしまった。この作品の瞬発力はなんだろうか。いやはやすごい。時間的に一気に読めたのも大きかったと思うがまさに、「絶対、最強の恋愛小説。」

あなたはここで、息ができるの?

あなたはここで、息ができるの?



<40>川澄浩平『探偵は教室にいない』東京創元社 ★3.5
第28回鮎川哲也賞受賞作。日常の謎的学園ミステリで、派手ではないけど、文章といいミステリといい非常に好感の持てる作品集。やや謎解きが小粒なところもあるけど爽やかな読後感。

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない



<39>今村翔吾『九紋龍 羽州ぼろ鳶組』祥伝社文庫 ★4
羽州ぼろ鳶組シリーズの第3弾。高位安定の面白さに加え、本作でスポットのあたる九紋龍の造形が見事。思わず涙腺が緩みそうになった。江戸の火消しという設定だけでも面白みがあるけど、本シリーズはみんな人物はとにかく魅力的。ますます今後が楽しみ。

九紋龍 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

九紋龍 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)



<38>箕輪厚介『死ぬこと以外かすり傷』マガジンハウス
幻冬舎の天才編集者と呼ばれる著者の思考論的著書。タイトルそのままの内容で、一見過激に思えるけど、いい悪いは別にして筋の通った考え方は一定の説得力はある。けどみんなが箕輪さんみたいになったら世間は成り立たないし、それがわかっているからこそ本にできるし出る杭になれるのだろう。全部は無理にしても考え方の一端はまねできる。

死ぬこと以外かすり傷

死ぬこと以外かすり傷



<36,37>アンソニーホロヴィッツ、山田蘭訳『カササギ殺人事件(上下)』創元推理文庫 ★4.5
興味をそそる導入から上巻をまるまる使った作中作、そして休む間を与えることなく衝撃の下巻、とエンタテインメント度抜群のミステリ。古き良き時代と現代とまさに一粒で二度美味しいとは本書のための言葉だろう。そして読みやすさだけではない訳者の技も光ってる。まさに本年を代表する作品だろう。

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

2018年10月に読んだ本

<35>名倉編『異セカイ系講談社タイガ ★3.5
第58回メフィスト賞受賞作。中盤までは読みやすいけど苦手なやつかな~、と思いながら読んでいたけど、そこからの展開が哲学めいて興味深かった。ド本格のメタフィクション。それにしてもメフィスト賞は次々と特異な才能が出現しますな。

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)



<34>似鳥鶏叙述トリック短編集』講談社 ★3.5
このタイトルからしてかなりハードルをあげた著者に敬意を表したい。ただその分トリックの技巧の重きを置いた短編集になってしまったのは否めない。物語に没頭してこそ驚きは大きくなるのだろうから。それにしてもこの帯と装丁はスバラシイ。

叙述トリック短編集

叙述トリック短編集



<33>久保寺健彦『青少年のための小説入門』集英社 ★4.5
面白かった!読書の楽しさを主人公の一真と登に改めて教えてもらったような感じ。ディスレクシアという読字障害も初めて知った。後半はある程度予想できたけど、切なかったな。来年の本屋大賞に推すがどうか。

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)

2018年9月に読んだ本

<32>赤松利市『鯖』徳間書店 ★3.5
アングラ感漂う装丁の通り、昭和の荒くれ漁師たちの底辺の暮らしぶりからの・・・。登場人物がみな独特で魅力的。怒涛のラストがやや唐突だったかなぁ。

鯖 (文芸書)

鯖 (文芸書)



<31>坂口安吾『不連続殺人事件』新著文庫 ★3.5
嬉しい復刊だが、冒頭は文章が読み難くいのと登場人物の多さに辟易した。ただ、事件が動き出してくればのめり込める。「心理の足跡」という言葉が印象的。読者への挑戦やその応対は読んでいて楽しいし、戸川氏と北村氏の対談もお得感あり。

不連続殺人事件 (新潮文庫)

不連続殺人事件 (新潮文庫)



<30>八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』東京創元社 ★4.5
大人びた小学生ハルと金髪少女転校生イリスの青春小説。ミステリ仕立てのジョブナイルだけどラストにタイトルの意味が明かされグっとくる。好みど真ん中でした。

ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)

ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)

2018年8月に読んだ本

<29>デイヴィッド・グラン著、倉田真木訳『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』早川書房 ★4.5
なんというノンフィクションだろう。20世紀初頭に起こった20人を超える先住民が殺された事件の真相に迫るだけでなく、アメリカ社会の暗部をあぶり出す衝撃のノンフィクションだ。事件の解決よりも地域社会の恐ろしさに身震いする。

花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生


<28>須賀しのぶ『夏空白花』ポプラ社 ★4
敗戦直後に高校野球の大会開催に奔走した史実を基にした骨太物語。テーマも面白さもドストライクなのだが、好きすぎるゆえに、もっと深さを求めてしまう。

夏空白花

夏空白花


<27>宿野かほる『はるか』新潮社 ★3.5
『ルビンの壺が割れた』の覆面作家による2作目。AIとの恋愛モノでありがちなストーリーではあるがリーダビリティが高くのめりこめる。

はるか

はるか


<26>黒澤いづみ『人間に向いてない』講談社 ★4
第57回メフィスト賞受賞作。ある日突然、人間を異形の姿へ変貌させる「異形性変異症候群」。なんていう恐ろしい病を考え出すものだ。ただグロテスクなのではなく意外と社会派小説だったりした。

人間に向いてない

人間に向いてない


<25>新井見枝香『探しているものはそう遠くはないのかもしれない』秀和システム ★3
新井賞などで一方的に存じている書店員さんのエッセイ。リアルなのか虚構なのかわからないが笑えるエッセイだ。

探してるものはそう遠くはないのかもしれない

探してるものはそう遠くはないのかもしれない


<24>朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』新潮社 ★4
軽いテイストかと思いきや予想以上に、社会派でシリアスな展開に。働き方改革が叫ばれる昨今だが、なぜ過労死へと至ってしまうのかという心理が垣間見える。

わたし、定時で帰ります。

わたし、定時で帰ります。

2018年7月に読んだ本

<23>高橋弘希送り火文藝春秋 ★3
第159回芥川賞受賞作。文章は洗練されていて巧いと思ったけど終盤の描写は唐突に感じた。

送り火

送り火


<22>清水浩司『愛と勇気を分けてくれないか』小学館 ★4
これぞ青春!な物語。広島という地域ならではの話も随所に。熱さと切なさが沁みわたる。

愛と勇気を、分けてくれないか

愛と勇気を、分けてくれないか


<21>山田ルイ53世一発屋芸人列伝』新潮社 ★4
いわゆる一発屋芸人に一発屋芸人が当時のことやその後を取材した異色の本。テーマの面白いが著者の文才が冴えている。

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝


<20>大岡昇平『事件』創元推理文庫 ★4.5
不朽の裁判小説。丹念な取材とコツコツと事実を積み重ねて思わぬ真実を引き出す様は見事。

事件 (創元推理文庫)

事件 (創元推理文庫)


<19>秋保水菓『コンビニなしでは生きられない』講談社ノベルス ★3
第56回メフィスト賞受賞作。読みやすさや親しみやすさはあるけどヘビィな結末だし、トリックも今一つだったかなぁ。

コンビニなしでは生きられない (講談社ノベルス)

コンビニなしでは生きられない (講談社ノベルス)

2018年6月に読んだ本

<18>木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』講談社ダイガ ★4.5
第55回メフィスト賞受賞作。死んだ者が生きていたときの情報のみで犯人を推理するという斬新な短編集。読みやすく、かつ、なるほど感あるミステリで好印象。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)


<17>今村翔吾『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組』祥伝社文庫 ★3.5
羽州ぼろ鳶組第2弾。期待に違わず熱量ある物語。辛い場面もあるがますます続巻が楽しみ。

夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)